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既刊書籍

一芦舎

既刊書籍


『民俗考古学——必要が生んだ継続性』
2023年11月刊 B5判 206頁
名久井文明著

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木の実や樹皮の利用方法は、縄紋時代の遺跡にもその事例がのこされており、それは親から子へ、子から孫へと受け継がれ、人々が山間部で生きていくうえで不可欠な伝統的な生活技術となった。

考古学の研究方法として民俗考古学的手法を成立させた著者が、出土遺物に備わる文化的意味合いを、民俗事例を手掛かりに解明する。

食料の乾燥と備蓄、樹皮利用、木材利用、堅果類利用、矢を射ない弓、太縄、運搬具について、先史時代から現代までの継続性を指摘。モース以来の伝統的考古学研究方法では着手しえなかった文化的側面の領域を、民俗考古学的方法で解明。豊富な図解により出土遺物および民俗事例の類例が一覧でき、今後の一次資料研究において貴重な指針を示している。


『遠野物語の向こう側 人々は懸命に生きた』
2021年11月刊 A5判 416頁
名久井芳枝著

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『遠野物語の向こう側』に位置する地域と遠野郷の日常の暮らしの内実はほぼ同質である。にもかかわらず『遠野物語』が醸し出す不可思議さは何か――。

実際の聞き取り調査で得たデータと、三百年間におよぶ年表、土地制度を座標軸にして『遠野物語』を読み解いた労作。

著者は、三件の国指定重要有形民俗文化財に携わり、遠野郷の北側に隣接する北上山地民俗資料館の名誉館長を二十数年務めてきた名久井芳枝研究員。

本書は、民俗調査を長年にわたり積み重ねながら、『遠野物語』に感じる拭いきれない違和感の正体を考え続けていた著者の全方位的考察をエッセーとしてまとめたもの。

『遠野物語』に見える、さらわれた女性たちの気持ちが汲み取れずにいた著者は、調査を通じて「友子制度」の実態を知るにいたり、そこでもがいていた女性たちの心境に辿り着いたことで、やっと違和感から解放されたと記している。
さらに、非日常的な怖い話や噂話が浮遊していた背景には、現実的な社会経済構造として、鉱山産業で働く人々と里人との間に存在した異文化の衝突があったと著者はとらえている。


『地域の記憶―岩手県葛巻町小田周辺の民俗誌』
葛巻町小田地区の民具・生活史研究会
名久井文明、名久井芳枝著
2008年2月13日 A4判 208頁
定価 2500円(税込) 送料(1冊分)370円

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村落の暮らしがまるごと収められた誌上博物館。
北上山地北部のある集落の人々から生活の「記憶」をすっかり聞き取り、長年にわたる調査記録を写真化・実測図化した。

雑穀栽培、牧畜、稲作、養蚕などを営んできた農村の仕事道具や生活用品が集められ、奇跡のように良好な状態で保存されていた資料館があった。

繊維の採取、機織り、裁縫用具、作業着や普段着、履物、自然物採集用具、食品製造や調理の用具、食器、酒や煙草に関連した用具、住居、家具、備品、暖房や照明用具といった多岐にわたる収蔵品は、この治の農耕、畜産、牛方、養蚕、炭焼き、出稼ぎ先での山仕事など、人々のさまざまな営みを物語っている。それらの資料を手がかりに、人々の記憶に残るかつての暮らし、今では忘れられようとしている昔の「普通の暮らし」を丹念に調査し、聞き書きを整理した。

掲載資料は各々その用途・用法などを聞き取り調査し、各章各節ごとに語り手の氏名も記され、信頼性が高い。

――こうした昔の生活用具は決してごみでもがらくたでもない、どれもこの地で生きるうえで無くてはならなかったものであり、人々の暮らしの中で生み出されたそれぞれの時代の生きた証である――(「はじめに」より)


昔の人々の堅実で慎ましやかな暮らしぶりや寡黙な努力の痕跡をしのび、次代へと受け継いでいきたい「地域の記憶」である。


増補改訂版 『実測図のすすめ ―「もの」から学術資料へ―』
名久井芳枝著
2003年3月9日 B5判 255頁
実測図及びその他の図版279,写真53
定価 3900円(税別) 送料(1冊分)370円

 【 目次 】

『実測図のすすめ ─モノから学術資料へ』(名久井芳枝著、1986年)の増補改訂版

増補改訂版『実測図のすすめ』は、研究者のその後の成果を踏まえ、初版以後の実測図を大幅に加えて内容の充実をはかりました。また初版では触れなかった発掘資料(考古資料)の実測作図化について、有形民俗資料及び諸外国の民族資料を念頭に、問題提起を試みています。更に資料のデータベース化と検索について、研究者自身が作成している各種のデータベースの互換性をはかる上で行っている方法を、実例で紹介しています。

 初版より34頁増の大幅増補ですが、扱いやすさを考えて紙質を薄くし、軽量化をはかりました。


『山と生きる─内間木安蔵家の暮らし』
名久井文明、名久井芳枝著
実測図:岩手大学人文社会科学部学生
2001年9月刊 B5判 371頁
実測図およびその他図版411, 写真53
定価 4,095円 送料(1冊分370円)(残部僅少)

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懸命に「山と生き」た人々の暮らしの全容を浮かび上がらせた一書。

岩手県北部北上山地の懐深く、自然と共生しながら代々(150年間)暮らしてこられた一家の生活を、自然環境、生活空間、暮らし、生産生業、社会生活という項目をたてて見つめています。

研究者の主観に左右されにくい、伝統的諸技術の分析で得られる情報に重きを置き、有形民俗資料を実測図で記録し、さらに綿密な聞き取りを重ねるという方法による調査。その結果必然的に得られた情報を整理し構築しています。

調査は10余年にわたり、260余名の学生が参加。この調査で研究者が多岐にわたって示唆を得た成果は、下記のようにまとめられています。

名久井文明
 「終章 もうひとつの考古学に向けて」
名久井芳枝
 「付編1 糸作りから機織りまで」
 「付編2 [つむ]の使い方・[糸撚り車]の使い方」
 「付編3 織り─その原点と[はたし(機)]」


『九十歳岩泉市太郎翁の技術』
名久井文明著
実測図・バックデータ:岩手大学学生
実測図監修:名久井芳枝
1994年9月刊 B5判 224頁
実測図164, 写真164
定価 3,500円(売り切れ)

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「良い聞き出し役がいれば、古老は縄文時代と現代を結び付ける語り部にすらなる」
─「天声人語」(1994.09.15)より

杣、木挽き、木工、樹皮加工、藁加工、製炭、薪採り、牛飼い、雑穀栽培および種子食…、かつて人は生きるために多岐にわたる技術をひとりで操ることができました。

市太郎翁と著者が10余年の歳月をかけて、その生きる術を浮き彫りにする。


『若者たちと民具─モノは彼らに何を語ったか』
名久井芳枝編著
文・実測図:岩手大学生 資料提供:長内三蔵
1991年3月刊 A5判 316頁
実測図179, 写真180
定価:3000円 送料(1冊分)370円(残部僅少)

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「もの」に対して無意識だった若者の心が、実測作図作業を通して変化していきます。
現代に欠けている教育への問題提起。

同時に文化財保護活動の先駆的実践であり、民具研究の学問的方向性をも示唆。